2020.06.22
株式会社レナウンについて,5月15日午後4時00分,東京地方裁判所より,
民事再生手続開始決定がなされました。
これにより,銀行のローンの返済だけでなく,
取引先(仕入先)等への支払いも禁止されました。
創業1902年のアパレル業界を代表する老舗であり,
1963年に東京証券取引所上場。
直近の資本金 184億7106万円
従業員数900名超
売上高502億円でした。
アパレル業界を代表する企業です。
マスコミでは,
「コロナの影響によって,レナウンは倒産した」
などと報道されています。
世間でも倒産したと感じておられる方も多いかと思います。
ですが,
レナウンは,倒産したとは言えません。
なぜなら,レナウンは営業を続けているからです。
5月15日以降もレナウンの店舗は営業を継続しています。
その営業に必要な仕入れ代金などの支払いも行われているはずです。
払ってくれなければ,商品を入れてもらえないです。
法律的にも民事再生手続開始決定後に仕入れた商品の代金は支払えます。
「倒産」という言葉は,知らない人はいない位,一般的ですが,
その意味は,とても曖昧です。
実は,「倒産」は,法律上の用語ではありません。
法律には「倒産」という用語は出てきません。
だからこそ,その意味が曖昧です。
辞書でも,その定義はぶれています。
複数の辞書を参照すると,
「経営資金のやりくりがつかなくなってつぶれること」
「企業が不渡手形などを出して銀行から取引停止を受け、営業困難に陥ること」
「財産を使い果たして、事業などが破綻(はたん)して,会社などがつぶれること」
など,表現はさまざまです。
世間一般の方の意識では,会社がつぶれる=消滅する,というイメージが強いのではないかと思います。
ですが,レナウンは,民事再生手続を利用しています。
民事再生手続は,簡単にいうと,
その会社の事業は続けながら,負債を大幅に圧縮して,再建を図る
という裁判所の手続です。
財政上は破綻して払えなくなっているのですが,そこは救済されて,
会社自体は残る。
事業も継続する(できればそのまま。必要であれば縮小して)
店舗も続ける(赤字店舗があれば閉店して)
その意味では,
倒産とは言えない
と言えます。
ちなみに,航空会社のスカイマークも,民事再生手続をしています。
2016年3月28日に東京地方裁判所から民事再生手続開始決定がでています。
ですが,全日空等から支援を受けて,約1年2か月で民事再生手続を終了させています。
そして,今では上場を目指していますね。コロナの影響でそれどころではないですが・・・
当時は,スカイマークも倒産という報道が流れましたが,
今,このスカイマークが過去に倒産したんだと言えるでしょうか?
ということで,
レナウンも倒産ではない。
再建中と言ったほうが正確なのです。
とはいえ,再建には多額の資金が必要なので,スポンサー(経済的支援企業)探しが重要になります。
もしスポンサーが見つからなかったら,
民事再生手続を諦めて,破産になってしまうかもしれません。
そうなると,会社はなくなりますから,倒産といえます。
そうならないように頑張ってほしいと個人的に応援しています。
2020年6月23日,事業再生弁護士の大竹夏夫でした。